燃油サーチャージ、それは燃油価格の高騰に伴い運賃以外に航空会社が徴収する追加費用です。
海外旅行用の航空券の場合は発券時に同時に支払いが必要になる費用なのですが、その料金は国際的な原油料金の変動や渡航先によって変わってきます。
通常気になるのは日系2社(ANAとJAL)が徴収する燃油サーチャージ(呼び名はどちらも燃油特別付加運賃)の料金になります。
日系2社が発表する燃油サーチャージ改定のニュースはよく耳にしますが、その改定は「旅行開始国が日本の場合」と「旅行開始国が日本以外の場合」に分けられています。
旅行開始国が日本以外の場合ってどんなとき?
それは日本国籍者なら海外在住者が日本に一時帰国するときが想定されますが、そうじゃないときもあります。それはエアライン修行の時です。
ケースバイケースなのですが、同じ日本=海外を往復する航空チケットでも海外を出発するパターンで発券したほうが安いことがあるのです。そのメリットこそが海外発券で、航空会社のステータスを目指すためのエアライン修行時にコスト削減のためによく用いられる発券方法です。
燃油サーチャージ改定の影響は海外発券時にも及び、それが「旅行開始国が日本以外の場合」になります。
旅行開始国が日本の場合の燃油サーチャージ改定のことはよく目にするのですが、海外発券への燃油サーチャージ改定の影響はあまり記事として見かけないので、この記事でまとめてみようと思います。
燃油サーチャージ(燃油特別付加運賃)とは
かつて航空機の燃料に使われる原油の価格が急激にあがり、航空会社が燃料代をまかないきれなくなったときが生じました。その時にIATA(国際航空運送協会)が1997年に燃油サーチャージ制度を決定し、燃油代の一部が乗客負担で徴収されるようになりました。
燃油サーチャージは原油価格が1バレル6千円を下回る場合など、一定レベルまで下がれば徴収されないことになっています。
その燃油サーチャージの金額は原油の相場を元に算出されるのですが、航空会社や発着日によって金額が異なります。また燃油サーチャージを徴収しない航空会社もあります。日系2社の場合、だいたい年6回の2ヶ月毎に改定しています。
燃油特別付加運賃の改定について
ANAの場合原則として燃油特別付加運賃は2ヶ月間固定され、指標となる航空燃料価格の3ヶ月前の直近2ヶ月のシンガポールケロシン市場価格の平均が用いられます(JALもほぼ同じです)。
平均値算出対象期間 | 適用額発表時期 | 発券日 |
12月〜1月 | 2月中旬〜 | 4月〜5月 |
2月〜3月 | 4月中旬〜 | 6月〜7月 |
4月〜5月 | 6月中旬〜 | 8月〜9月 |
6月〜7月 | 8月中旬〜 | 10月〜11月 |
8月〜9月 | 10月中旬〜 | 12月〜1月 |
10月〜11月 | 12月中旬〜 | 2月〜3月 |
上記のように原油価格の変動は3ヶ月後の発券に影響してきます。
そしてシンガポールケロシン市場価格の平均が6,000円を上回った時に、燃油特別付加運賃として旅客1区間1片道あたりの設定金額を以下のように決められます。
ケロシン 平均価格 | 日本=北米 欧州 中東 オセアニア | 日本=ハワイ インド インドネシア | 日本=タイ シンガポール マレーシア など | 日本= ベトナム サイパン グアムなど | 日本= 東アジア (韓国除く) |
ゾーンA 6,000円以上 | 3,500 | 2,000 | 1,500 | 1,000 | 500 |
ゾーンB 7,000円以上 | 7,000 | 4,000 | 3,000 | 3,000 | 1,500 |
ゾーンC 8,000円以上 | 10,500 | 6,000 | 4,500 | 3,000 | 2,500 |
ゾーンD 9,000円以上 | 14,000 | 8,500 | 6,500 | 4,000 | 3,500 |
ゾーンE 10,000円以上 | 17,500 | 11,000 | 8,500 | 5,000 | 4,500 |
ゾーンF 11,000円以上 | 21,000 | 13,500 | 10,500 | 6,500 | 5,500 |
ゾーンG | |||||
ゾーンH | |||||
ゾーンI |
※ゾーンG〜Iは設定あるものに、あまりの値段に恐ろしくて載せれず
上記は1区間片道1人の料金なので、4人家族ならば8倍の金額が往復の海外旅行に費用として発生します。
例えば2019年2月現在はゾーンEなので、4人でハワイに家族旅行に行こうとすると11,000×8人の88,000円が燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)として徴収されます。これは日系2社の場合特典航空券のときも同様です。なかなかにバカにならない金額となっています。
海外発券の場合の燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)の改定について
海外発券の場合、その購入地によって設定が変わってきます。
旅程 | 購入地 | 通貨 |
日本発 | すべて | 円 |
海外発 | 下記以外 | ドル |
海外発 | 欧州 | ユーロ |
海外発 | 英国 | ポンド |
海外発券の場合は欧州と英国発券以外はすべてドルの発券日換算レートに基づき各国通貨建てで徴収されます。
この記事では欧州・英国発券することは修行僧的に少ないだろうと考えドル建ての燃油サーチャージ改定ルールについて表にまとめてみます。
ケロシン 平均価格 | 日本=北米 欧州 中東 オセアニア | 日本=ハワイ インド インドネシア | 日本=タイ シンガポール マレーシア など | 日本= ベトナム サイパン グアムなど | 日本= 東アジア (韓国除く) |
ゾーンA 60米ドル以上 | 43 | 25 | 18 | 12 | 6 |
ゾーンB 70米ドル以上 | 86 | 49 | 37 | 25 | 18 |
ゾーンC 80米ドル以上 | 129 | 74 | 55 | 37 | 31 |
ゾーンD 90米ドル以上 | 173 | 105 | 80 | 49 | 43 |
ゾーンE 100米ドル以上 | 216 | 136 | 105 | 62 | 55 |
ゾーンF 110米ドル以上 | 259 | 166 | 129 | 80 | 68 |
ゾーンG | |||||
ゾーンH | |||||
ゾーンI |
※韓国はさらに安いので表記を省いています。
現在の円ドル為替(1ドル=110円前後)だと、同じゾーンではドル建ての燃油サーチャージ費用は日本円よりも割高です。
しかし海外発券の料金ゾーンと日本発券の料金ゾーンは同じではないのです。
例えば2019年2月現在の海外発券の燃油サーチャージはゾーンで言えば「C」となっています。日本発券がゾーンEなので、為替計算をしたら海外発券の方が燃油サーチャージは割安となっています。
また燃油サーチャージ改定のルールも異なるようです。例えば2019年1月→2月の燃油サーチャージ改定のタイミングを確認してみると
- 日本発券|ゾーンD→ゾーンE
- 海外発券|ゾーンC→ゾーンC
となっていて海外発券の燃油サーチャージ料金の改定が行われませんでした。普通の人ならあんまり気にならない海外発券での燃油サーチャージ改定についてですが、修行僧のワタシとしては結構重要なポイントでなおかつこれからもお世話になると思うのでこれからも経過を追っていこうと思います。
海外乗継が絡んでいたり渡航先によってルールは色々変更しますので詳細は公式ページをご確認ください。
燃油サーチャージの推移経過表
適用期間 | 日本発券ゾーン | 海外発券ゾーン |
2018年12月〜2019年1月 | ゾーンD | ゾーンC |
2019年2月〜2019年3月 | ゾーンE | ゾーンC |
2019年4月〜2019年5月 | ゾーンB | ゾーンB(NEW) |
最新の燃油サーチャージ改定のニュースはまずANAが2019年2月18日に更新しました。JALも2019年2月19日に更新し内容は同じでした。
それによると日本発券はゾーンEからゾーンBまで3ランクダウンします。コレは影響が大きいです。ハワイ旅行だと1人往復14,000円も安くなり、4人家族旅行だと56,000円も安くなります。できるだけ発券は4月に入ってからがいいです。
対して海外発券の場合、前回は変更なかったのですが今回はゾーンCからゾーンBに1ランクダウンします。エアライン修行で人気のクアラルンプール発券なら、片道18ドル安くなります。往復で36ドル、約4,000円の修行代経費削減ができます。もし2019年後半期に修行を計画しているのなら発券はやはり4月まで待つべきでしょう。
適用となる運賃について
燃油サーチャージ(燃油特別付加運賃)は航空券の発行日に有効な運賃に発生する費用です。つまり料金は旅行開始日ではなく発行日(分かりやすく言えば購入日)にその時点での燃油サーチャージは発生するのです。
燃油サーチャージの改定は旅行予定日ではなく発券時期こそが重要となります。そして発券後に燃油サーチャージ料金の改定・変更が生じても、差額の徴収や払い戻しは発生しません。
燃油サーチャージは旅行日ではなく発券日が重要
よって旅程が迫っていなくて、さらに原油価格の変動から数ヶ月待てば燃油サーチャージが安くなることが予測されるのならば発券を待つのも一つの手です。
しかし燃油サーチャージの変更は正確には予測できませんし、数ヶ月待ったあとに空席が残っているかも予測できませんし、空席が残っていても航空会社の安い運賃クラスが売り切れてしまって高い運賃でしか買えない可能性もあります。
個人的には1ランクのアップダウンぐらいしか予測されないのならば、発券できるうちに発券しておくほうが「吉」とは思います。しかし今回のように3ランクも下がるとなるとちょっと考えちゃいますね(;´Д`)。
しかし燃油サーチャージの差額払い戻しが発生することもあります。それは上記のように燃油サーチャージ改定により費用が値下げしたあとに旅程を変更した場合です。逆に変更後の燃油サーチャージが値上げしていたら、旅程変更後に差額を徴収されます。
コレは旅程の一部を変更しても適応され・・・ゴニョゴニョ。まああまり小細工はしない方がいいと思います。予約変更後に希望旅程が残っている保証なんてどこにもありませんから。
まとめ
海外旅行好き、そして航空会社のステータス好き、突き詰めればエアライン修行僧にとって非常に重要な燃油サーチャージの改定についてまとめました。
普通だったらあまり目を向けないのですが、エアライン修行で海外発券をする場合は海外発券時の燃油サーチャージ改定についても目を向けておかなくてはいけません。なぜならその改定ルールは通常の日本発券と微妙に異なるからです。
海外発券時に必要な燃油サーチャージは今のところゾーンCからBへとマイルドな変動となっています。エアライン修行の場合はお一人様が圧倒的に多いでしょうから、それならば無理に旅程を変更しなくてもいいかなとは思います。
ただ逆に、エアライン修行の場合は国内区間の予定変更も容易だし、繁忙期の人気路線を利用するわけじゃないので満席リスクもないのでヒョイヒョイっと変更してもいいのかもしれませんが・・・・自己責任でお願いします。
ちなみに格安航空会社(LCC)では燃油サーチャージを徴収しない会社がほとんどです。こんな料金を計上していたら格安じゃなくなっちゃいますからね(・・;)。
ですので、原油価格の低下はLCC普及にとっても良いことです。